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2008年2月18日 (月)

JALについての個人的な疑問と危機感

JALについては、何度かこのブログや他の媒体でも取り上げてきた。

特に安全面での取り組みに大いに疑問を感じることが多かったからだ。

しかし、05年3月に事業改善命令と警告書を受けるに至った安全トラブルについて、その検証とその後の安全への取り組み、柳田邦男氏を座長とする安全アドバイザリーグループの設置などを行い、06年度は(トラブルが多発した)05年度に比べ、やや改善の傾向が見られたように思えた。

しかし、私は現在JALの安全運航への取り組みについて再び疑問と危機感を抱いている。

2月16日、JALに関する2つのニュースがあった。

502便の管制指示違反と、958便のカートが適切に収納されずに離着陸したニュースだ。

以下、JALのサイト内の「ご報告」から。

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JL502便における管制指示違反について
2008年2月16日 JL502(新千歳空港発 羽田空港行)にて管制の離陸許可を受けないまま離陸滑走を開始した事例が発生いたしました。詳細については調査中でありますが、このような事態はあってはならないことであり、心よりお詫びを申し上げます。今後再発防止策を講じて、航空会社として最大の使命である安全運航の堅持に取り組みます。

(発生日時) 2008年2月16日 10時33分頃 (日本時間)
(発生場所) 新千歳空港
(便名) JL502 (新千歳空港発 羽田行)

(搭乗者数) 乗客数 428名 / 運航乗務員 3名 / 客室乗務員 15名 / 総数 446名
(使用航空機)  ボーイング747-400型機 (JA8904)

尚、当該事例は重大インシデントと認定され事故調査委員会にて原因調査が行われます。本調査に全面的に協力するとともに、再発防止に努めてまいります。

http://www.jal.co.jp/other/info2008_0216.html

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JL958における不適切なカート収納が発生した件について
2008年2月6日JL958(プサン発 成田行)において、お客さまにご提供する機内食が入ったカートを所定の位置に収納せず、ラバトリーに収納し離発着した事例が発生しました。

当該機内食は封をされていた状態であったとはいえ、お客さまにご提供する上で配慮が足りなかったことを深くお詫び申し上げます。今後このようなことがなきよう、乗務員の周知徹底を図り、再発防止策を講じてまいります。

http://www.jal.co.jp/other/info2008_0216-2.html

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どちらも乗客・乗員の安全に関わる深刻な出来事である

管制指示違反については、重大インシデントとして認定され、調査が徹底的に行われることになる。

気になるのは二つ目のカートが定位置に収納できなかったケースだ。

事例そのものに加え、「不適切なカート収納が発生した件について」というリリースの文章を読む限り、

現在、JALの安全への取り組みに関して、改善の傾向はストップした、あるいは05年に逆戻りしているように感じられる。

JALでは、2005年5月14日726便で着陸前のカート収納ミスが発生しているが、それを受けて、再発防止のための対策を以下のように発表していた。

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(1) 当該便全客室乗務員を当面乗務から外し、再教育プログラムを実施いたします。
(2) 全運航乗務員、全客室乗務員へ事例周知を実施するとともに、運航乗務員と客室乗務員間のコミュニケーションを綿密に行い機内の情報を的確に把握した上でより一層の安全運航の確保を図るよう注意喚起を行いました。
(3) 当面の間、本事例が発生した当該路線に管理職客室乗務員を追加で乗務させ、安全および業務実施状況の確認を行います。

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今回の958便におけるカート収納ミスに関しては、トイレに収納した機内食を配布したことのみをリリース(「ご報告」)でお詫びしているが、(乗員・乗客に怪我などは発生しなかったものの)安全面で大きな問題が生じている

また、それが1クルーの問題ではなく、JALがどれだけ深刻にこの出来事を受け止めたのか、リリースを読む限り全く伝わってこない。それどころか、その受け止め方に大いに疑問を感じてしまうのだ。

トイレに入れた機内食を乗客に出したことも問題かもしれないが、このケースでクローズアップされるべき、そしてJALが「お詫び」し、周知徹底し、再発防止に取り組むべきはは、むしろ安全面の問題ではないだろうか。

客室乗務員は、離着陸前の安全性チェックで、離着陸時に浮動物となりえるものが無いかギャレーや客席などを念入りに確認する。

カートについては、ギャレーの収納場所の床のロックにきちんと固定されているか、安全ブレーキがしっかりかかっているか、ギャレーから飛び出さないように固定する爪がかかっているか、カートのドアが閉まってかつロックされているか・・・などというように、カートだけでもいくつもの項目をチェックする。

あれだけの大きさと重量と強度をもつものが乗客や乗務員自身にぶつかれば、大きな怪我につながるからだ。

それが、あれほど大きなものを収納できないことを見逃すはずがない。

もし見逃したら保安要員である客室乗務員が乗務している意味がない。

保安要員として客室乗務員は、様々な「異常」に目を配らねばならず、コックピットの中からは気付きにくい機体などの異常や、テロの可能性のある「不審物」がないかどうか、チェックすることなども重要な仕事だ。

カートのチェックなどは基本中の基本であって、しかも比較的早いタイミングでチェックが可能な項目だ。

そもそも、ドアクローズ前に、ギャレーに収納できない台数のカートが搭載されていることを誰も気付かない(気付けない)、あるいは気付いても声をあげない(あげられない)こと自体、既に異常な出来事だと思う。

トイレに離着陸前にカートを収納したということは、少なくとも離陸前には気付いたということだ。

カートの収納場所が無く、離着陸の衝撃に耐えられるよう固定できる定位置に収納できないことに気付いたにも関わらず、その時点で機長に報告をしないまま離陸、そして着陸を行っている。

基本的職務が遂行されていない、

何らかの理由でその基本的な職務を遂行できなかった人間をカバーできる人間が誰も存在しなかった、

あるいは気付いて連絡したものが居たにも関わらず、連絡系統のどこかで信じがたい判断ミスが生じた・・・などが考えられるが、いずれにしてもこの異常事態には驚くばかりだ。

05年5月の事例の反省とその後の再発防止の対策は、958便のケースを見る限り、全く生かされていないように見える。

対策としてあげていた事例の徹底乗務員間のコミュニケーション、それどころか、安全面での基本的な業務の徹底すら疑問を感じる。

約3年前の出来事で風化したわけではあるまい。

しかも、わずか3ヶ月前の2007年11月3日には、 スカイマーク114便で、着陸時に、機体後部に収納されていたカートが動き、乗客2名に接触し、一名は肩に打撲、もう一人は右足膝骨折という事例が発生していた。

経営再建と安全運航の確保の両立は生易しいものではないが、空の安全を強く願うものとして、引き続きJALの動向をしっかりウォッチしていきたいと思う。

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