先日、福岡から東京に帰る機内で同期Nに再会した。
せいぜい月に一、二度しか飛行機に乗らない私が、(いまや数少ない)仕事を続けている同期に再会できる確率ってどれくらいなのだろう。
何万分の一?何十万分の一?いずれにせよとても低い確率であることは間違いない。
でも、どうして国内線にNが乗務しているのだろう?
聞く前にNが答えた。
「成田から異動になったのよ」。
私はどうやら飛行機での「再会運」が強いらしい。
ほぼ飛行機移動の度に昔の仕事仲間に出くわす。
私がANAを利用する楽しみのひとつは昔の仲間との再会。
そして、ひと時代が過ぎたというのに外見もノリもほとんど変わっていないその姿に驚くのだ。
でも、10数年ぶりに再会した同期のNは少し変わっていた。
昔はバリキャリを地で行くようなイメージがあったのだけれど、機内で見たNはとても穏やかだった。
後で気がついたのだが、搭乗する直前、ゲート近くのショップで買い物をしていてNを見かけたのだが良く似た他人かと思ってしまった。
それほど印象が違った。月並みな言葉で言えば「丸くなった」。
名札を見たところ、苗字は昔と変わっていないが、彼女もこの10数年間にいろいろあったのだろうか、などと憶測をめぐらす。
そういえば、最後に会った時とは会社の制服も変わっている。
他の乗務員が新しい制服を着ているのは何も違和感を感じないのだが、訓練生時代から一緒だった同期が着ていると、見知らぬ航空会社の制服のように感じる。
飲み物のサービスが終わったらギャレーに押しかけようかなどと思いつつも、他の乗客が不快に感じるかもしれないと思い、じっと席に座っていた。
通りかかった他の客室乗務員に機内販売をお願いすると、Nが品物を持って笑顔で私の席までやってきた。
「Nのこういう笑顔って見たこと無いな」と思った。
考えてみれば乗客の視点でNを見ることは初めてだったことに気がついた。
仕事に対してはいつも攻めの姿勢、同期の中でも訓練生時代からエリート的なイメージが強かったけれど、彼女の一面しか見ていなかったのかもしれない。
そして・・・。
やっぱり、この十数年間には人生の大きな出来事がいくつもあったのだろう。
羽田に着くまでに彼女にメッセージを渡そうと思い、自分の名刺の裏にあれこれ書いてみたのだが、なんだかどれも違う気がして結局手渡すことが出来なかった。
降機の際に混みあう機内の通路でお互い女子学生のように言葉にならない言葉を交わし彼女と別れた。